全盛期までの長い間、科学者たちは「人間の脳は不変である」と考えてきた。しかし、仏教の僧侶たちに対して行われた数々の実験によって科学界の意見は根本的に変化した。研究者らは僧侶たちの脳をスキャンし、人間の脳は「固定」されているのではなく、一定期間にわたって変化することができる臓器であることに気づいたのである。

「仏教の脳」をスキャンしてわかったこと

ニューヨーク大学の副教授を務めるゾラン・ジョシポビック氏は、神経科学の立場から瞑想の研究に長年携わってきた経歴を持つ。実際に、同氏は研究の過程で多くの著名な仏教徒の脳をMRIスキャンしてきた。

「瞑想を実践すると注意力が養われると言われています。私たちは瞑想を科学的に研究することで、脳には機能の変化や自己改善の能力があることを突き止めましたのです。人間の脳にこうした機能があるという事実はこれまで知られていませんでした」
ジョシポビック氏は、BBCとのインタビューで瞑想研究は非常に有望であると語った。

研究を通してジョシポビック氏は、仏教の修行僧が「同一感覚」と呼ぶ心のリラックス状態に入る際、自身と周囲を隔てる心理的な壁を下げることで、神経回路が変化することを発見した。熟練した僧侶であれば、瞑想の間、内在神経回路と外在神経回路の両方を同時に活性化することもできるという。

外在神経回路は、パソコンでタイプしたりゲームをするなど、外部の事柄を扱う際に活性化する。一方、内在神経回路は、人間が自分自身について考えるときにのみ活性化すると言われている。一般には、これらの両方が同時に完全に活性化することはない。しかし仏教の僧侶はこれをやってのけることができるため「同一感覚」に入ることができるのだと考えられている。

人間の脳は変化するのか

僧侶の脳に関する様々な研究を参照すると、僧侶たちはいわゆる「マインドコントロール技術」に関する高度な能力を有していることがわかる。これは近年の「思考によって脳を変化させられる」という研究結果とも一致する。

仮に、あなたが元気を無くしている時、友人から「前向きになれ」とアドバイスされたとしよう。それは決して冗談ではなく、科学的な根拠があるのだと思い出してみると良いかもしれない。

研究が進めば、うつ病や薬物中毒を持つ人々を助けための瞑想技術を開発することができるかもしれない。実際に、一部の薬物リハビリテーションセンターでは、治療の一環として瞑想が行われている。また、自信のない子供や社会的不安を持つ子供に対し、幼い頃から瞑想に親しませることで、自尊心に関する問題を抱えたまま成長してしまうことを防げる可能性もある。瞑想のレッスンが行われている刑務所では、受刑者が落ち着いている傾向があるという研究結果も出ている。

瞑想と神経科学の組み合わせによって人類をどのように助けることができるか、取り組みはまだ始まったばかりだ。この研究の進展は、人類をより穏やかで幸せな時代へと導く可能性を秘めている。

(翻訳・今野秀樹)